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7/13 オーストラリア国立バレエ団「白鳥の湖」 [バレエ]

いやー、面白かった。
なぜかチケットが売れていなかったようで、得チケはでるし、バレエ系のチケット掲示板では
沢山譲渡に出ているし、どれだけ客席が空いているか心配だった。
でも観にいって正解。本当にドラマチックで、面白い。

いわゆる普通の「白鳥の湖」とは全然違う。
イギリス王室、故ダイアナ元妃をモチーフにした「白鳥の湖」となっている。
音楽も、よくあるプティパ版などではなく、より原典に近いものらしい。

あらすじはこんな感じ。
第一幕でジークフリート王子と結婚するオデット。
でも結婚式最中から王子は愛人である男爵夫人(オディール兼ロットバルト?)といちゃいちゃする。
傷つき混乱したオデットは、結婚式を台無しにしてしまい、サナトリウムに追いやられる。
(男爵夫人が糸をひいている感じかな)
第二幕では、サナトリウムにいるオデットに王子が見舞いにやってくる。
なかなか打ち解けないが、ようやく王子と打ち解けそうになるオデット。
でも窓の外に男爵夫人を見て、また打ちのめされる。
しかし療養中に清らかな心と平安を取り戻す。
第三幕は、男爵夫人の館でのパーティで、男爵夫人と王子はごく普通にカップルとして登場する。
そこへオデットが登場し、王子を取り戻そうとする。
清らかなオデットに心奪われる王子。対抗してオデットをサナトリウムに戻そうとする男爵夫人。
サナトリウムに戻るのが嫌で、オデットは逃げるのだが
オデットを追いかける王子と王子に取りすがる男爵夫人を見かけてしまう。
結局王子と一緒では心の平安は求められないということに気づき、自殺するオデット。
オデットを失い、悔やむ王子。捨てられても毅然とする男爵夫人。

ええー?! 近来稀に見る最低な王子じゃないか!
お ま え が 1 番 悪 い!

あらすじだけだと、それってどうなの?という感じもあるけれど
実際に舞台を見ていると、ぐいぐいと引き込まれる。

まず、この日の王子は、ダミアン・ウェルチ。
ヒュー・ジャックマンとブレンダン・フレイザーをミックスしたかのようなイケメン。
見た目がいいので、オデット、男爵夫人両方から愛されるというのが納得できる。
スタイルもよく、上半身裸にサスペンダーパンツ姿やら、タキシード姿が決まっている。

オデットはカースティ・マーティン。
小柄で綺麗。でもちょっと初々しさに欠けるかなぁという気もする。

男爵夫人は、ルシンダ・ダン。
彼女は前回の世界バレエフェスに出ていたのだが、正直そのときは
なぜフェスに出る?という雰囲気、レベルだったと思う。
フェスに出ているほかの綺羅星のようなダンサーに比べたら、あまりにも普通だったのだ。
しかし、男爵夫人は違う。踊りはそう変わっていないのだろうけれど
役の把握度合いというか、掴み具合が素晴らしく、単に悪役ではない男爵夫人になっている。
このルシンダ・ダンと比較すると、カースティのオデットは良い具合に可憐。

セットも綺麗。
1幕は全体的にオフホワイトか白でまとめている。
ガーデンパーティスタイルの結婚式で、衣装も男性以外はほとんど白。
しかし男爵夫人のみペチコートが黒い!
踊っていてスカートが翻ると、なんだか不吉な雰囲気を醸し出す。
ここでチラシなどに使われた、オデットのトレーンが長いドレス姿が披露される。
トレーンの扱い方、あしらい方もなかなか素敵。
2幕でのサナトリウムは、マシュー・ボーンの「白鳥」を髣髴とさせるデザインだけれど
白鳥たちのシーンでは、舞台中央奥にある円形の台といい、舞台右手についている
すかし風な羽の飾りといい、上品だしとっても素敵だった。
それに比べて3幕のパーティシーンでの、黒と金を基調にした派手派手でくどい館が
禍々しいくらいで、はっきりと判りやすい(笑)
衣装も黒と金になって、艶やかかつ背徳的。
その後のオデットを追い求めていくシーンでは、2幕と同じく円形の台が登場するけれど
2幕とは違い、寒々として荒涼とした背景とあいまって、暗い予兆を描いている。
ところで円形の台は、たぶん湖を表している。
だから2幕は想像の中なのでキラキラしていて、3幕は夜の湖だから暗いのかも。

振り付けというか踊りは、とにかくリフト!
男性陣(特に王子)は、ここでもリフト、あそこでもリフト、という感じにひたすらリフトしている。
しかもごく普通のリフトではなく、ちょっと変わったリフトが多い。
こりゃー体力ないとできないね。

また振り付けのグレアム・マーフィーさんは
アイスダンスのトービル&ディーン組の振付をしたこともあるそうで
そのせいかスケート風な振り付けもあって、バレエとしては珍しい感じ。

通常2幕でオディール登場前後に踊られるチャルダッシュが
1幕の結婚式のお祝いとして出てくるのだが、これはちょっと大人な振り付け。
少し淫靡なんだよなぁ。
その後に王子と男爵夫人の様子を見て混乱したオデットが踊るのだが
曲はオディールの曲だったり、道化の曲だったり。
招待客の男性陣に嬌態を振りまくオデットは、確実にその場から浮いているし
また悲しい存在でもあることが、うまく表現されていると思った。

1幕のラストが、ちょっと怖い(笑)
オデットがサナトリウムに入れられ、王子と男爵夫人がその場に残る。
男爵夫人は自分の夫と子供を先に返し、王子との逢瀬を楽しむのだが
その時に、ちゃっかりと女王の椅子に座ってしまうのだ!
王子は最初は焦るけれど、男爵夫人に丸め込まれて(?)
膝枕してもらっちゃったりする。バカだなぁ。
でも男爵夫人は怖い。権力も欲しいのね…

2幕では白鳥達が登場してくるのだが、4羽の白鳥も2羽の大きな白鳥もいる。
振り付けも通常のものと似ているのだけど、4羽は腕の動きやフォーメーションもあり
いつも以上にちょこまかとした雰囲気をだしている。
コール・ドは結構揃っているし、足音も静かで実力充分。
またたぶんオデットの幻想なので、王子とのパ・ド・ドゥも美しい。

そして3幕では、1幕で醜態をさらしたオデットがオディール登場の曲にあわせて
清らかに登場して、その場の人々を魅了する。
通常版との反転が面白い。
男爵夫人のパーティ=悪の現場に真っ白なオデット=善が来る、という感じなのだ。
でも王子奪還(笑)に来るオデットは、設定上は清らかなのだろうけど
決意と自信がみなぎっていて、あまり清らかに見えなかったりする…
ここが惜しい。
おどおどと入ってきても魅了できないだろうし、これは難しいなぁ。
有無を言わさないキラキラ感があれば、いいのかな。

正直、王子がオデットに再び惹かれるにはちょっとオデットの存在が弱いかなぁと思うのだけど
でもセットや衣装などで納得させる。すごい。

また男爵夫人はといえば、寛一お宮のように王子に追いすがるけれど
結局王子はオデットを選び、去っていく。
たぶん男爵夫人の王子への気持ちは、追いすがるまでは欲得ずくであったのだろうけど
失ってみて初めて気持ちがわかるもの。実際は王子を愛していたのだと思う。
しかし男爵夫人は悲嘆にくれたりせず、きっと顔を上げて、きっちりと諦めるのだ。
うーん。今までのヒドイ人ぶりから打って変わって、悪いけれど格好良い人に…

ところで3幕でのオデットの登場方法もちょっと凝っている。
普通に扉を開いて入ってくるのではなく、人垣の中から急に現れるのだ。
去っていくときも同じ。人垣の中に入っていって、気づくと消えている。
そして3幕2場(になるのかな?)で、王子とオデットの別れのシーンでは、
オデットは湖に沈んでいく。
例の円形の台の一部がせりになっていて降りていくのだが
その時に、台の上にかかっていた黒い布もろとも沈んでいくのが、とてもドラマチックだった。

そういえば、確か3幕でオデットが踊っていた曲がチャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲で驚いた。
とっさには何の曲か出てこず、「ん? この曲は白鳥じゃないけど、えーとなんだっけ?」と
なってしまった。舞台に集中したいのに、思い出せなくて気持ち悪かった~。
こういう思いがけない曲使いの場合は、プログラムにも明記して欲しいな。

さてグダグダと長い感想になってしまったので、締め。
どの登場人物にも感情移入しにくいし、生粋のバレエという振り付けでもないし
大人~な振り付けもあるし、誰にでもお勧めできる演目ではないけれど
古典の「白鳥の湖」に飽き足りないという人には、絶対お勧め。
古典からの換骨奪胎ぶりも面白い。

日程が合えば、もう一度じっくり見たかったなぁ。


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