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8/13「ルグリと輝ける仲間たち」Bプロ [バレエ]

今回で最後となる「ルグリと輝ける仲間たち」の公演。
来年、マニュエル・ルグリはパリ・オペラ座の定年を迎えるので、世代交代ということなのか。
ルグリの踊りが大好き、というわけではないけれど、
観れば必ず満足できる踊りを見せてくれるという点で、ルグリは職人肌のダンサーだと思う。
だんだんこういう『確実な』ダンサーが減ってきているような気がして、とても残念。
ルグリだってまだまだ踊ってくれるのだろうけど、冠公演がなくなれば
それだけ見る機会も減ってしまうのだから、もったいないことだ。

そして今回の公演を最後に踊らなくなるというモニク・ルディエール、
ルグリより一足先に定年となったローラン・イレールの2人が出演する。

しかし最近のパリ・オペラ座はダンサーの怪我による降板が多い印象を受ける。
前回のバレエ団の来日公演でもそうだし、今回も数度ダンサーが変更となった。
オレリー・デュポンの怪我による降板により、Aプロにはジョゼ・マルティネスとアニエス・ルテステュが、Bプロにはローラン・イレールが出演することになったのだが、これはかなり嬉しい交替。
もともとイレールは、来日公演予定をみてチケットを購入しても、来れなくなることが多く
結構見逃していた。たとえば、新国立バレエの「マノン」。確かほかにもあった。

というわけで、前回のルグリガラと同じ演目「さすらう若者の歌」であっても
イレールとルグリが踊ってくれるなら、なんでもOK! という気分。
単純だよなぁ…

さてなるべく簡単に感想を。
【第一部】
★「タランテラ」 メラニー・ユレル アクセル・イボ
えーと。衣装のせいか、なんだか発表会ちっくな雰囲気が漂っていた。
もちろん踊りは悪くはないのだけど、初々しさが勝っているというか…
ま、今まで見ていたのがトップダンサーによる公演だったから、ここら辺の落差はしょうがないかな。

★「アベルはかつて…」 グレゴリー・ドミニャック ステファン・ビュヨン
以前も見たことがある演目なのだが、この演目、振り付け(マロリー・ゴディオン)って
若手男性ダンサーにおいしい演目だと思う。
2人のダンスレベルが同等で、見た目力も同等であれば、ダンスの良さが二乗されるというか。
というわけで、今回の2人はなかなか良い。
見目麗しいグレゴリーに、グレゴリーより少しダンスがうまいステファンでいい組み合わせ。
兄弟の危ういバランスが出ていて、ドラマチックに仕上がっていた。

★「ドニゼッティ - パ・ド・ドゥ」(初演) ドロテ・ジルベール マチュー・ガニオ
ルグリによる振り付けで、途中に超絶とまでは言わないだろうけど
かなりの技巧を凝らしている。マチューは落ち着いたなぁ。安心してみていられるけれど
いまだキラキラ感が抜けないところが素晴らしい。
ドロテは頑張っていたと思う。
だが、しかし! 衣装が変!
イマドキ黒基調で赤や黄色を使った派手派手衣装なんて、あまりにもコテコテすぎて驚く。
もっとすっきりと上品な衣装にならないかなぁ。
なんというか一昔前のロシア系バレエ団のドンキのような衣装だった…

★「オネーギン」 モニク・ルディエール マニュエル・ルグリ
ええ、もうまったく文句はありません。
まさに「エトワール、ここにあり!」な渾身の踊りだったと思う。
ルディエールのタチヤーナが素晴らしい。
オネーギンからの恋文を実に複雑な表情で見る。喜び、悲しみ、諦めなど、本当に様々。
で、ルグリのただひたすらタチヤーナを追い求めるオネーギンは、哀れで悲しい。
オネーギンのルグリももちろんいいけれど、たぶんタチヤーナがしっかりと描かれていないと
ぐだぐだになってしまうだろう。
また2人のPDDは、タチヤーナの揺れる思いが存分に表現されていて胸に迫る。
終わって、なんでこれがトリではなかったのだろう? としみじみ思う。
これがトリではないなんて、なんて贅沢な!
他の演目にどんなに不満があっても、これ1演目でほぼ帳消しでした。

【第二部】
★「ビフォア・ナイトフォール」
  第1パ・ド・ドゥ: メラニー・ユレル、マチアス・エイマン
  第2パ・ド・ドゥ: エレオノーラ・アバニャート、ステファン・ビュヨン
  第3パ・ド・ドゥ: ドロテ・ジルベール、オドリック・ベザール
  3組のカップル: マチルド・フルステー、ローラ・エッケ、シャルリーヌ・ジザンダネ、
            アクセル・イボ、グレゴリー・ドミニャック、マルク・モロー
たぶんはじめて観る演目。(初めてじゃないとしても以前は寝ていた?)
墨色の衣装が素敵。コンテンポラリー作品で、割と淡々としている。
若手勢ぞろい、といった感じなのだけど、若さが悪い方に気にはなることはなかった。
スピード感もあるし、ダンサーも活き活きと踊っているような気がする。
やっぱりこういうコンテンポラリー作品のほうが、今のオペラ座メンバーは得意なのかも。
個人的には、結構好きなアバニャートの演目がこれしかなかったのでちょっと残念。
もう少し観たかったかも。

★「牧神の午後」 バンジャマン・ペッシュ
なんじゃこりゃ作品。振り付けはティエリー・マランダン。
曲は確かに「牧神の午後」。振り付け内容も確かに(たぶん)「牧神の午後」。
ニジンスキー初演時のスキャンダラスな部分をクローズアップしてみました、という感じ。
まずペッシュは白いブリーフに似せたパンツ1枚の姿。
舞台上には、巨大なティッシュボックスと、巨大な丸めたティッシュが2個。
といってもこれはティッシュじゃないかもしれない。巨大泡立てネットみたいな感じだったから。
ということで、モチーフはずばり自慰。
ま、コンテンポラリーはどんな風に振り付けてもいいんですけど(笑)
でもこの作品、全然エロスを感じなかったなぁ。
カーテンコールでは、いわゆる牧神の午後ポーズ(横向きで前倣えみたいな)で
出てきたりするサービス精神旺盛なペッシュ。
なんとなく私の中では、マリインスキーのイーゴリ・コールプと何か重なるものを感じる。
なんだかちょっとイロモノ担当というか…

【第三部】
★「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”  ローラ・エッケ オドリック・ベザール
昨年末のマリインスキー来日公演でのロパートキナ&コルスンツェフの輝くばかりの
「ダイヤモンド」の記憶が抜けない。
トップダンサーのロパートキナの踊りと比べるのは可哀想というものだが
あまりにも出来が違いすぎて、腹も立たない。
無論これといった失敗もないのだが、「ダイヤモンド」はこういうレベルのダンサーが踊っても
全然面白くない。まさに力不足、といった感じなのだ。
もっと他の演目のほうがいいと思う。結構大型のペアなので、もっと活きる演目を踊らせて欲しい。

★「ドリーブ組曲」 ミリアム・ウルド=ブラーム マチアス・エイマン
こちらはジョゼ・マルティネス振付、アニエス・ルテステュ衣装の作品。
ジョゼ&アニエスの踊りで2回見ているが
今回の2人にはあまり向いていない演目のような気がする。
どちらかというと落ち着いて上品なペア向きで、若さある2人にはもっと他の演目を
踊って欲しいと思う。小柄で愛らしいペアにこそ合う演目もあると思うのだが。
でもマチアスもかなり頑張って踊っていた。結構難しそうなのだが、途中までは非常にいい感じ。
逆回転(?)マネージュあたりで力尽きつつあるのが見えてしまって残念。
ミリアムは安定。でもくどいけれど、他の演目で見たかった。

★「さすらう若者の歌」 ローラン・イレール マニュエル・ルグリ
前回のルグリガラでも確か観た演目なのだが、もう一度この2人で観られるとは思っていなかった。
イレールは気持ち身体のラインが緩んでいたけれど、それでもルグリと並んで
他の若者たちとは段違いの踊りを見せてくれた。
確かに今の二人だと「若者」ではないけれど、その分じっとりと重みがあり、しみじみと良い。
瞬きするのも惜しいくらい、見入ってしまった。
できればこの二人によるノイマイヤーの「作品100-モーリスのために」を見てみたい。

ラストは、かなり長いアンコール。
特にルグリ、ルディエール、イレールに対して惜しみない拍手があった。
もちろん私も手が痛くなるほど拍手。
イレールもルグリを立てて、ルグリを前に押し出したりしていたし、
若手ダンサーはノビノビとした挨拶で、アバニャートなんて舞台上に降りてきたカラーテープをストールのように首にぐるぐる巻きしてみたり、和やかなカーテンコールだった。
一度幕が降りて、客席もさぁ帰ろうか、というときに幕内から拍手と歓声が聞こえてきて
それに答えるように客席がまた拍手をして、ルグリがまた出てきたりもした。
最後らしく、とてもよい締めだったと思う。

ここ最近の「ルグリと輝ける仲間達」は「ルグリ先生と教え子達」の臭いが強くなっていたけれど
バレエ団の引越し全幕公演だと目立たないソリスト以下がきっちりとクローズアップされるから
若手お披露目公演としては、結構良かったと思う。
これがなくなるなら、次回からどうするのかなー。
かといって「エトワール・ガラ」みたいなちょっと悲惨な若手オンリー公演は嫌だけど(笑)


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