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2010/12/19 東京バレエ団「M」 [バレエ]

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初めて見た「M」。
休憩なしの1時間40分は万全の体調で臨まないと、集中力が途切れてしまってすこしつらい。

それにしても素晴らしかった。
詩的、としか浮かばないけれど、ほんとに詩的。
最初の女性陣による海のシーンから、引き付けられてしまった。
青磁色の衣装で結跏趺坐のポーズを取っているのだが、見とれてしまう。
踊りも「女性」というより中性的な艶めかしさを感じさせるようなもので
笑いさざめくシーンなどうっとりとしてしまう。
童謡を歌うシーンも透明な声が似合っている。

これ、日本人の作品ではなくベジャールの作品だということが、本当に驚き。
祖母に手を引かれて歩く少年三島といい
市川崑の金田一シリーズのようなうらさびしい日本的な香りが濃厚に漂っていると思う。

三島の分身でもあるイチ、ニ、サン、シ(死)はオリジナルキャスト。
とってもラッキーだ!
イチは高岸さん、ニは後藤さん、サンは木村さん、シは小林十市さん。
イチ、ニ、サンは3人の個性の違いが改めてはっきりとみえて、面白いなぁと思った。
高岸さんは、本当に日本人男性ダンサーとしては珍しく長身で、
しかも陽性の雰囲気が強く漂う。ラテン系というか楽天的な感じがするのだ。
後藤さんは、わりと「いかにも」なダンサーぽい。
男性的で少しばかりナルシストな雰囲気もありといったところ。
木村さんは佇まいがダンサーらしくない。
ごく普通のお堅いサラリーマンのようなのだ。
ナルシスティックなところは微塵もなく、どちらかというと求道者という感じ。
貴重な存在だけど、クラシックでは王子役がはまらないだろうなぁと改めて感じる。
でも踊りは一番木村さんが安定していたと思う。キレもあってよかった。
小林さんは、この3人とはまた違う個性がある。
カリスマというのとは少し違うけれど、この場でシは小林さんしかいない、
という雰囲気をまとっている。
踊りもキレがあるし、これでバレエ引退なんて勿体無いと思ってしまうが
渾身の踊りを見られてよかったと考えることにする。

聖セバスチャンの長瀬さんは、意外とといったら失礼かもしれないけれど
よかった。
苦悩に満ちた踊りのときは、痩せた体躯がとても意味ありげだし
晴れやかな金パンツでの踊りはうって変わって本当に晴れやかでにこやかな踊りで
あっているなぁと思った。
オリジナルの首藤さんのセバスチャンも見たかったけれど
長瀬さんでも十分満足した。

それと美味しい役だと思ったのは、射手の永田雄大さん。
格好よすぎ!
東京バレエ団のブログで弓道の練習中の画像がアップされている。
(ブログは他の写真&情報満載でおすすめ!)

個人的には、この4人と聖セバスチャン役の長瀬さんと、
群舞以外の役付き女性陣との差がありすぎたような気がする。
女性陣、少し弱いんだよね。重要な役どころなのに意外と記憶に残ってない。
18日のベテランメンバーだと違ったのかなぁと思う。残念だ。

それと「禁色」の女性3人の衣装の色が、顔色にあってなかったかな。
肌がくすんで見えて勿体無い。
オリジナルの人には合う色だったのかもしれないけれど
もう少しトーンを変えるとかできなかったんだろうか?
できないんだろうな、きっと…


舞台はとにかく美しかった。
途中ではたはたと落ちてくる白い幕。
その幕が雲海のように風をはらんで膨らみ動く様は前方席で観てもとても綺麗だった。

そして楯の会のグレーの制服。
そこに青磁の女性陣が加わり、楯の会メンバーが持つ桜の薄いピンクの枝がとにかく映えた。
そしてざざーっと降り注ぐ桜の紙吹雪。
桜が一気に散る様と楯の会の散る様が二重写しになり、胸に迫る。

少年三島の割腹で終わりかと思ったが、その後はシャンソンの「ジャタンドレ」で終わる。
悲しく寂しいだけではなく、なんとなく救いのある終わりでよかったな、と思ったのもつかの間。

最後は、最初の海に戻り、はしゃぐ少年三島と祖母のシーン。
このはしゃぐ子供が死へと突き進むのかと思うとやっぱり悲しくなって終わりとなった。

ああ、すばらしい舞台だった。
理解が足りないところもあるので、また観たい。
昔NHKで放送したという舞台録画を、また放送してほしい。
放送が無理ならオンデマンドでお金払ってもいいから観たい。

しかし、これ初演時には三島家族からはどう思われたのだろうか?
同性愛的傾向を示唆するような半裸の男性陣が出てきたりしたけれど
不快感を示されたりしなかったのか、少し気になる。
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